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2013年 09月 18日
置いてきてしまったもの
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羽田空港にて、全日空ボーイング777-200型機、だそう。
乗換のため、特別扱いで、「裏道」を通ることになったおかげで撮ることができた。





2013年9月上旬 東京都大田区 羽田空港
SONY NEX-7, SONY E 16-50mm F3.5-5.6 PZ


子供の頃、飛行機が好きだった。小学校2年生の文集には、パイロットになりたいと書いていたはずだが、この頃の子供としては、有り体のことだと思う。もっとも、じきに視力が下がって、ただの夢になってしまった。

ボーイング747型機ジャンボジェットがもてはやされていた時代だった。私には、頭がずんぐりむっくりしているこの機体のデザインがスマートとは思えず、好きになれなかった。それに、主翼に二つずつ付いたエンジンがいかにも重そうだった。加えて、みんなが好きなものにはそっぽを向く性格も原因となっていたのかもしれない。

そんな私にはロッキードL1011型機トライスターが格好良く見えた。機体本体はまっすぐと伸び、とくに全日空の「モヒカン」デザインがそれを強調していた。そして、垂直尾翼の根元に、でーんと構えるエンジンが際だって個性的で、安心感もあった。垂直尾翼だけにエンジンがあるボーイング727も個性的であったが、主翼には一つもなくて、いざという時に大丈夫なのかとても心配で、好きになれなかった。その点、トライスターは、主翼にも一つずつエンジンを積んでいてバランスよく、安心にも思えた。

小学2年生の時、札幌から東京の伯母の家に、飛行機で一人旅をした。といっても、一人だったのは千歳と羽田の間だけで、しかもスチュワーデスさんによるエスコート付きという待遇であった。普通、同じ会社で往復するものだが、どうしてもトライスターに乗りたくて、我が儘をいって、行きが日航でジャンボ、帰りは全日空でトライスターにしてもらった。

行きの日航ジャンボジェット機は、前から2、3列目の窓側だった。何より美人のスチュワーデスさんに目を奪われていたに違いない。紺色と赤色が配された制服が、強く印象に残っている。我ながら、すっかりご満悦だったに違いない。

一方、帰りのトライスターは、主翼より後ろだったと思う。景色が遮られていたことと、ジャンボに比べて大きかったエンジン音と振動の印象が残っている。この時の水色の印象は、トライスターに施されていた全日空の機体デザインだったのか、あるいはスチュワーデスさんのスカーフの色だったのか、定かではない。

その後、747への印象がまんざらでもなくなった。理由は推して知るべし。

トライスターは、ロッキード事件で頻繁に名前を目にすることになってしまった。引退の時に、やはり騒音が問題であったことを新聞記事で目にした。幼い私の憧れは、ちょっぴり切ない記憶になってしまった。

ようやく今になって映画「風立ちぬ」を見た。主人公が憧れたもの、そして大切にしていたものが失われたことが、切なかった。自分が思い描いた飛行機、そして大切な人。ゆっくりと胸を打った。ただただ切なかった。

もう上映が終わってしまうと、数日前に朝の上映を予約をしたものの、台風で電車が止まってキャンセルした。ようやく電車が動き始めて、午後の上映に滑り込んだ。がら空きかと思っていたら、座席はかなり埋まっていた。

日々の生活の中で、切なさを感じることが時々ある。とはいえ、積み重なる日常に追われ、心がすぐに流してしまっている気がする。それが重くのしかかるのはごめんだが、多少ならば、時々受け止めておいた方が良い。きっと、その方が優しくなれる。私も、切なさを受け止めておくことを、どこかに置いてきてしまっていた気がする。


置いてきてしまったもの_e0037563_8435744.jpg

渥美半島付近上空にて伊良湖水道
右が志摩半島、左が渥美半島、手前が知多半島、中央は神島


ちょっとの間、お返事をすることが難しいのですが、コメント欄を開けます。

by photo-nupuri | 2013-09-18 00:00 | 移動


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